いつから俺はパトロンになったんだ

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大学院留学中の僕と東京藝大のぶっとび彼女

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ファンキーな住職に出会った話

大学生の頃、家庭教師をしていました。1時間半が1コマで4000円、時給2666円というこの上なくおいしいアルバイトを友人に紹介され、飛びつきました。初めて担当したのは中学生の男の子で野球部。野球なら話も合わせられるし仲良くなれそうだと思っていましたが、「生徒の父親が厳格な方だからマナーには気をつけるように」と会社の方から言われていたのが少し気がかりでした。

 

生徒は、全体的な習熟度は低いものの真面目でいい子。何事もなく初回の授業が終わり、生徒の母親に挨拶をして帰ろうとしたところ、見た目はおよそ50代の男性がリビングにいました。茶色い着物のようなものを纏い、頭頂部が光り輝いていたので、この人が生徒の父親であり住職だと容易に予想できました。

 

「◯◯(生徒)の父です。先生、せがれには人生を教えてやってください。」と言われ、いやいやそれはお父さんの仕事でしょうよと思いつつお茶を濁していると応答がありません。しまった、怒らせてしまったかなと思いよくよく見ると、生徒の父親はヘッドフォンをしながら戦争ゲームでオンライン対戦をしていました。

 

テレビの画面に夢中でノールックで挨拶。真剣な顔で「ふっざけんなよ!!」と呟きながら仮想空間で人殺しをするのが住職という、仏の顔も一度目から鬼になりうる瞬間を見た僕は、この生徒に人生を教えられるようになろうと胸に十字架を切りました(切ってません)。

 

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それから、幸運にも簡単な単元が続いたことで生徒の点数が飛躍的に上がったことと、家族の皆さんと僕が気が合ったこともあって、生徒やその家族とすぐに打ち解けました。晩ご飯のおかずを自分にも用意して持ち帰らせてくれるようになり、時には外食に連れて行ってもらうこともありました。とりわけ生徒の父親は大変気前のいい方で、ある日、授業の後に生徒抜きで2人で焼肉に行き、ごちそうしていただくことになりました。

 

当時、とても気になっていたことがありました。祖父の葬儀の際に、故人の好物として酒が棺に入れられていたのを見て以来の疑問です。

「もし自分の父親が亡くなったときには、父の好きだった焼き芋を棺に入れるべきなのか、それとも生のサツマイモを入れて棺のなかで焼き芋にするべきなのか。」

既に焼かれたのに棺のなかでまた焼かれるサツマイモなんて、いっちょまえのシチューを作る前にフライパンのうえで傷めつけられ飴色させられたうえに跡形もなく消える玉ねぎみたいに無力だし、かと言って生のサツマイモを入れようもんなら美味しい焼き芋へと姿を変えるサツマイモの背中を見届けることなく父は灰になってしまうんじゃないか。

 

きっと誰よりも数多くの葬儀に出席している住職なら、事例から答えを教えてくれるんじゃないだろうかと思った僕は、生徒の父親に聞いてみました。

 

僕:「焼き芋が好きな人の棺には、焼き芋か生の芋のどっちを入れるもんですか?」

生徒の父親:「どっちでもいいと思うけど、おすすめは焼き芋だなあ、そりゃあ。」

 

そりゃそうか。言葉は悪いかもしれませんが、棺の中は故人として最高の状態になっているわけで、そこには生の芋を入れるよりも焼き芋がベターなわけです。ただ、そうは考えない所謂「生サツマイモ派」の人もしばしばいるそうです。

 

以前その生徒の父親が住職として招かれた葬儀では、故人は胃ガンだったそうで、好きなものを全く食べることができずに亡くなったとのことでした。故人の兄はそれを不憫に思い、「あいつ母ちゃんの作る茶碗蒸しが大好きだったんだよな〜」と言いながらアイボリーの液体(茶碗蒸しの素)を遺体にかけ、薄切りの椎茸とかまぼこ、銀杏を盛ったそうです。すると親族から「こいつも茶碗蒸しの具になるじゃねえか!!」と至極真当なツッコミが入り、大笑いと苦笑が入り混じった微妙な雰囲気が流れたそうです。

 

焼肉を食べ終えた僕は、大恥を掻く前に聞いておいてよかったとホッとしつつ、バイクを置いたままだったので住職さんと生徒の家に戻りました。生徒の母親にもお礼を言おうともう一度お邪魔したところ、生徒のお母さんはヘッドフォンをつけて戦争ゲームでオンライン対戦をしていました。くわばら、くわばら。

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